【驚愕】セラピストは触ることで治療成績を落としてる!!?

ショッキングなタイトルですが、残念ながらエビデンス(科学的根拠)のある事実です。

それも、かなり質の高い研究から導き出されたエビデンスばかりです。

(もちろん、全ての疾患ではありませんが多くの慢性痛・筋肉骨格系・脳卒中などは表題のとおりです。)

しかし、これらの研究報告は、きずなグループのリハビリサービスにおいては、逆に希望すら見えてくる素晴らしい研究報告だとも思いました。

なぜなら、我々は徒手療法から発展させ、生活期に合わせたリハビリサービスを開発しているからです。

これからお話する内容は、アメリカで活躍する日本人理学療法士の講義に参加して知り得た情報を元に記事を作成しております。

(本稿は、徒手療法を全否定するものではありません。)

テーマは、「遠隔理学療法 最前線」

その中で、「対面(直接)の理学療法(以下、通常介入)」と「リモートの理学療法(以下、遠隔リハ)」の効果比較の検証を、かなり質の高い研究結果を紹介してくれていました。

まず、主要な結論をまとめて以下に記載します。

1:慢性的な整形外科疾患(肩、腰、膝)の検査においては、”通常介入”も”遠隔リハ”も同様の検査精度であった。

2:筋骨格系の疾患において、身体機能の向上は”遠隔リハ”の方が改善した。

3:脳卒中系の疾患において、運動能力・高次脳・心理の改善状況は”遠隔リハ”においても、通常介入と同等かそれ以上の改善がみられた。

4:循環器系の疾患において、通常介入と遠隔リハは同等の効果。むしろ、遠隔リハの方が離脱率が少ない。

研究報告の詳細は、後半を御覧ください。

このように、遠隔リハの方が効果的という研究結果も多数報告されています。

もはやセラピストが直接触ることにこだわってリハビリすることは、患者にとって不利益に繋がる可能性が高いのです。

通常介入より遠隔リハの方が良い結果が出たことに対する私の考察としては、「遠隔リハは患者の自己効力感を高めること」になり、さらにモニタリングコストが低いことによって「運動療法の維持率を高めること」に寄与していると思われます。

すごく簡単に言うと、遠隔リハは患者の「自助努力を促進させたこと」が一番の改善要因だと考えてます。

本題に戻ります。

なぜ、アメリカで遠隔リハが普及しているのでしょうか?

コロナ禍だから?

いえ、違います。

アメリカと日本の理学療法士の状況を鑑みれば見えてきます。

以下が、状況比較です。

アメリカの理学療法士の人口比数:人口10万人あたり57.8人  合計数:約20万人 (日本理学療法士協会)

日本の理学療法士の人口比数人口10万人あたり79.1人 合計数:約10万人 (日本理学療法士協会) 

アメリカの国土は、日本の26倍

アメリカで理学療法士になるには、大学卒業後に4年間専門課程を得なければならず7年以上かかる。

開業権は認められているものの、経営は困難。レセプトで否認されることも多く。民間の保険会社ともハードに交渉しなくてはならない。

アメリカの理学療法の現状は、人口比率や国土に対して圧倒的に不利な状況です。

今後も、簡単には覆りません。

そこで、高効率なサービスとして生まれたのが遠隔リハです。

さらに、アメリカでエビデンス重視のリハビリが普及している理由は、公的保険も民間保険もレセプト(審査)かなり厳しいということ。

アメリカで開業している多くのセラピストは、レセプトを通すために直接交渉しなくてはなりません。

そこで、重視されるのが「検査」「治療」におけるエビデンスです。

エビデンスを武器に、彼らはレセプトを通しています。

(実際は、通らずお金をもらえないケースもしばしばあるようです。)

講師である一色DPT(Doctor of physical therapist)の印象的な発言の一つに、アメリカにおいてセラピストの腕に大きな差はないと言っていました。

それはネガティブな意味ではなく、どのセラピストもめちゃくちゃ勉強をしており、しかも感覚に頼ったものでなく、十分なエビデンスに則って「検査」「治療」をしているからだと。

さらには、ドクターとも良好な関係を作るためにも努力・研鑽は欠かせません。

そのためにも、正確な検査を実施し、適宜ドクターと連携する必要があります。

そして、もう一つ素晴らしいなと感じたのは鑑別診断です。

アメリカの理学療法士は、治療前に必ず理学療法の対象かどうかを判断します。

治療対象を見極めることは、

1:患者様のために無駄な治療をしない。

2:必要な医療に早期に繋げる。(レッドフラッグの場合)

3:結果的に治療成績を上げることにつながる。

4:売上貢献(レセプトが通る)

これらのメリットが生まれます。

もっと詳しく説明すると、

「あなたの腰痛は2週間で80%の確率で疼痛半減が見込まれますが、治療しますか?」と、ここまでエビデンスを使って患者様への同意を得たうえで治療を開始するそうです。

アメリカのセラピストの置かれている状況は、マンパワーや制度に守られている日本とは、雲泥の差です。

わたしは、改めて日本における理学療法士の存在価値を高める必要があると認識しました。

患者様や利用者様が望まれたからといって、思考停止の「マッサージ」や「ストレッチ(Passive-ROM)」に終始するリハビリは、終焉させるべきだと。

(とはいえ、納得無き変革は、相互に不利益を被るので戦略的に進める必要があります。)

リハビリセンターきずなでは、これからも「検査(評価)」「アセスメント」「目標」「能動的リハ」「モニタリング」「データ集積」を重視していきたいと思っていますので、皆さん宜しくお願い致します!!

以下は、講義中のエビデンス部分をメモしたものです。

英語の部分は、誤訳もあるかと思います。

ご容赦ください。

■エビデンス 1   (腰部伸展屈曲の運動での腰痛改善研究)

(伸展)Effectiveness of an extension-oriented treatment approach in a subgroup of patients with low back pain : a RCT by Browder DA,

Inclusion Criteria (選択基準)

LBP with symptoms distal to buttock ( 臀部への遠位症状 )

Centralization phenomenon identified at baseline mechanical examination (基本的機械的検査によって、特定された限局的現象)例:動作などの検査で、足先の痺れが臀部に移動するなど。

Age 18-60

Outcome

初期は、コアトレーニングの方が痛み改善。(半年後でも数%の改善)

しかし、2週目以降は伸展運動を繰り返した群の方が痛みが改善。(1月掛からず痛みは半減)

(屈曲)A comparison Between Two Physical Therapy Treatment Programs for Patients With Lumbar Spinal Stenosis by 筆頭? & Timothy W Flynn

pain in the lumbopelvic region and lower extremities 50 years of age

MRI findings consistent with LSS(evidence of compression of lumbar spinal nerve roots by degenerative lesions of the facet joint, disc,and/or ligament until flavum)

patient rating of sitting as a better position for symptom severity than standing or walking

→ 「Manual therapy Flexion walking」or「Flexion walking」

Outcom

6週間「Manual therapy Flexion walking 」では、8割痛みが改善

■ エビデンス 2    ( 遠隔理学療法と直接P Tとの比較研究)

〈検査〉慢性的な整形外科疾患(肩、腰、膝)に同様の検査結果:Cottrell et al 2018

〈特に膝検査〉自己触診、自己スペシャルテスト、自動運動、機能的動作において通常介入と同様だった:Richardson st al 2017

〈足首の検査〉14/15の症例検査で同様の結果:Russell et al 2010

■ エビデンス 3     (筋骨格系における遠隔リハとの比較エビデンス群)

Cottrell et al 2017:システマティックレビュー(13件)

身体機能向上には、遠隔リハの方が通常介入より有効であった

臨床家には有益な介入方法である。

TKA後の理学療法において通常介入と同等の結果

Mani et al 2016:システマティックレビュー(11件)

痛み、浮腫、可動域、筋力、バランス、歩行、機能アウトカムにおいて良い妥当性

腰部の姿勢は低い妥当性→腰痛と姿勢の関連性は低いという意味

瘢痕組織、神経伸張テスト、整形外科的テストにおいて中等度の妥当性

■ エビデンス 4     (脳卒中系における遠隔リハとの比較エビデンス群)

Sarfo et al 2018:システマティックレビュー

遠隔リハは、通常介入より同等以上の結果(運動、高次脳、心理)

BBS、DGI(動的歩行指数)、10m歩行試験、Caregiver Strain Index(介護者負担指標)

Bernache et al 2016:混合介入(訪問、電話、ビデオ)

機能アウトカム、バランス、上肢アウトカムの向上

介助者の負担減少と鬱の減少

■ エビデンス 5    (循環器における遠隔リハとの比較エビデンス群)

Hwang et al 2015:システマティックレビュー(11件)

遠隔リハは、通常介入と同等の効果

遠隔リハは、患者の離脱が少ないという特徴まで見られた。

■ エビデンス 6    (ウィメンズヘルスにおける遠隔リハとの比較エビデンス群)

Kinder et al:19のケースレポート調査

遠隔リハは、通常介入と同等

むしろ、安心感が増した。

Sjostrom 2013:SUI(腹圧性失禁)に対するRCT

症状、QOLは遠隔リハでも同様の結果

しかし、改善率、パット使用率、満足度、失禁回数は遠隔リハの方が高改善!